既に廃線となってしまいましたが、かつては八百津線と三河線の末端区間(碧南~吉良吉田間と猿投~西中金間)では気動車(LEカー)による運転が行われていました。
廃線まで活躍していた車両(キハ20形・キハ30形)は、全車ミャンマー国鉄に譲渡され、中々お目にかかることはできませんが、宮城県の栗原市でキハ30形登場以前に活躍していたキハ10形が保存されているので、今回紹介します。
キハ10形は、八百津線などの閑散線区の非電化運転に対応するため1984年に登場しました。通常の鉄道車両よりも随分と簡素化した車両で、台車はボギー台車ではなく1軸・エンジンや側窓などにバス部品を多用しており、レールバスとも呼ばれました。冷房装置すらついていなかった1984年製の1次車キハ11~13の3両と、冷房装置は設置した1985年製の2次車のキハ14~16が在籍しており、非電化になった八百津線や三河線の末端区間を中心に活躍してきましたが、バス部品を多用しているため老朽化も早く、1995年に登場したキハ30形に置き換えられ、名鉄では役目を終えました。
名鉄からの引退後は、キハ11~14の4両は解体されてしまいましたが、キハ15・16の2両は、宮城県のくりはら田園鉄道に譲渡されました。
くりはら田園鉄道譲渡後は、KD10形と呼ばれ、キハ15がKD11、キハ16がKD12となり、主に朝ラッシュ時の輸送力列車で活躍。2007年にくりはら田園鉄道は廃止されてしまいましたが、KD11(キハ15)は旧若柳駅にて、KD12(キハ16)が旧若柳駅隣接のくりでんミュージアム内に保存され、KD11(キハ15)は動態保存されています。
旧若柳駅では、月に2回ほどKD乗車会という廃線跡を活用した動態保存車の乗車会が実施されています。乗車会には、くりはら田園鉄道オリジナルのKD95形が使用されることが多いようなのですが、先日、KD10形の乗車会が実施され、KD11(キハ15)に実際に乗車できる機会があるということだったので、はるばる乗車してきました。
乗車会については、文章で述べるよりも写真をご覧頂いたほうがいいかと思いますので、写真をご覧くださいませ。旧若柳駅構内に停車するKD11(キハ15)。
名鉄時代のままの塗装で運行され、そのまま保存されています。
ボギー台車ではなく、一軸の台車が特徴的です。
一軸の台車の車両は、現在ではすべて現役を退いており、乗車できるのは貴重だと思います。
KD11とくりでんオリジナルのKD95形との並び。
KD11とくりでんオリジナルのKD95形との並びを横から。
横から見た方が台車の造りがよくわかりますね。
旧若柳駅で発車を待つKD11。
こうやって見ると、現役の鉄道路線と何ら変わりありません。
現役の鉄道路線と同様、駅の運転取扱者(右側の制服を着用した人)の合図のもと発車します。
乗車会では、旧若柳駅からJR石越駅方面に約900メートルほど進んだ片町裏信号所との間を往復走行します。
現役の鉄道路線ではないので、速度も自転車ほどのゆっくりとした速度でしたが、フワフワとした一軸台車特有の乗り心地を味わうことができました。
KD11に乗車できるのは非常に珍しいからか非常に混雑しており、乗車中の写真は撮影できず、車内等の写真はありません。
キハ10形には名鉄時代乗車したことはなかったのですが、キハ20形には三河線の末端区間で乗車したことがあり、内装の雰囲気が非常に良く似ており、懐かしさを感じました。
一軸台車の車両も実は今回が初乗車でした。
今回の乗車会のように、自転車ぐらいの速度なら問題にはなりませんが、それなりの速度が出ていたであろう八百津線などでは、乗り心地の悪さが問題になり、一時はヨーダンパーの設置が検討されたそうです。
結局は、設置されることはありませんでしたが、設置するのならどのように設置されていたのか興味深い話であります。
ここからは走行写真をご覧ください。
片道900メートルもの距離を走るので、通常の鉄道と同様、走行写真の撮影が可能です。旧若柳駅を発車するKD11。
腕木式の信号機も保存されています。片町裏信号所で折り返してきたKD11。
2枚とも踏切(だったところ)から撮影しました。
現役の鉄道ではないので、実際の踏切のように警報器や遮断機を作動させたりすることはできず、乗車会の際には、すべての踏切に警備員(シルバー人材センターの職員らしい)を配置し、警備員により踏切は閉鎖されています。
くりでんミュージアム内の車両もご覧ください。くりでんミュージアム内に保存されるKD12(キハ16)。こちらは運転シミュレーターになっており、実際に運転台の機器を操作できるようです(時間の都合で未体験)。
最後に、くりでんミュージアムおよび旧若柳駅へのアクセス等をご案内します。
旧若柳駅はくりでんミュージアムに隣接しており、基本的にはイベント時を含むくりでんミュージアムの開館時は見学可能なようですが、スタッフの方が不在の時や団体見学の際は見学不可となるようです。
アクセスとしては、JR仙台駅からの高速バスまたは石越駅からバス利用となります。
JR仙台駅からの高速バスは、宮城交通と東日本急行の共同運行便で1~2時間毎に運行されています。
石越駅からのバスは、栗原市のコミュニティーバスで本数が特に休日は少なく、1時間に1本しか運行されていない列車との連絡もあまり考慮されていないようなので、注意が必要です。
私はと言うと、東北本線の列車にも乗ってみたかったのですが、バス利用だと時間が良くないので、石越駅から往復歩きました。
スマホの地図アプリだと、徒歩40分程度と出るのですが、実際には30分ほどで到着したので、時間帯によってはバスを待つよりも徒歩の方が早く到着します。
行きは、スマホのアプリで指示された経路を歩いたのですが、帰りはくりはら田園鉄道の廃線跡沿いを歩いてみました。
線路がほとんどの場所で残っており、こちらも見応えがありました。
お出かけの際は、くりでんミュージアムのホームページもご確認の上お出かけください。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
おわり。