今回は、徳島県南部の海陽町を走る世界初の軌陸両用車であるDMV(Dual Mode Vihicle=デュアルモードビークル)について取り上げます。
DMVは、阿佐海岸鉄道により2021年12月25日から運行されています。
非常に簡単に言ってしまえば、マイクロバスに鉄道の線路上も走れるように、格納できる車輪を取り付けたと言えばよいのでしょうか。正式に営業運転での導入は、阿佐海岸鉄道が初めてですが、以前に岳南鉄道や明知鉄道などで、試運転や試乗会が行われたことがあるので、見に行かれたり、試乗会で乗車されたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
主な運行区間は、阿波海南文化村~道の駅宍喰温泉で、
阿波海南文化村・・(バスモード)・・阿波海南駅ーー(鉄道モード)ーー甲浦駅・・(バスモード)・・道の駅宍喰温泉、といった感じで運行され、土休日は、道の駅宍喰温泉まで行かずに、室戸岬まで走るものも運行されます。
阿波海南~海部間は、もともとはJR牟岐線の一部でしたが、DMVが運行されるということで、2020年11月1日に阿佐海岸鉄道に運営が移管されています。
DMVについて詳しくは、阿佐海岸鉄道のサイトにわかりやすく記載されていますので、そちらをご覧ください。
なお、DMVはマイクロバスタイプであるためか立ち乗りは認められていません。どうしても乗りたいという方は、発車オーライネットで予約ができるので、予約をなさってからお出かけになることをお勧めします。空席がある場合は、当日、運転士に申告することで乗車できます。
ここからは、写真や動画で順に紹介していきます。
牟岐線の列車で阿波海南駅に降り立ちます。牟岐線の阿波海南駅は、1面1線の非常に簡素な構造。元々は、中間駅だったので、こんなものでしょうか?
駅前には、駅前交流館が併設されており、牟岐線の列車やDMVの待合いスペースとなっています。トイレやコインロッカーも設けられています。
交流館の入口脇のDMV仕様の自動販売機。
こういうのを見ると、うれしくなるのは私だけでしょうか・・・?
駅前交流館の脇にDMVののりばがあります。
阿波海南での乗降時は、バスモードなので、バス停から乗車します。
宍喰温泉行きのDMVだと、阿波海南を出るとすぐにモードインターチェンジに入り、バスモードから鉄道モードへモードチェンジするのですが、モードチェンジを見学するための撮影スポットが設けられています。
線路の終端部分には、きちんと終端を示す標識が描かれています。
ほどなくして、乗車するDMVがやってきました。公共の乗り物なのに、駐車場にあるようなバーをくぐって駅に入ってくるのが面白いですね。
乗車するのは、スカイブルーの爽やかな塗装のDMV931。”未来への波乗り”号との愛称が付けられ、側面には太平洋の波や伊勢海老が描かれています。
事前に、発車オーライネットで予約してあったので、運転士に名前を言い、指定された席に着席します。
着席すると、モードインターチェンジに進み、鉄道モードにモードチェンジします。
鉄道用の車輪が出て、車高が高くなるのがわかると思います。
運転士が後方を確認して、異常がないことが確認できると発車です。
DMVは、宍喰温泉へ向けてゆっくりとした速度で進んで行きます。最高速度は、60㎞/hほどでしょうか?
一軸台車であることと、空気バネ台車などではない(主要諸元によると、車輪の昇降装置をバネとして使用しているらしい)ので、通常の鉄道と比べて、乗り心地は劣ってしまっているように感じました。レールのつなぎ目を通過する際の下から突き上げるような揺れと、速度が上がるにつれ生じるフワフワとした台車の不安定感から来る揺れが少し気になりました。
名物の山のないトンネルを抜けると海部(かいふ)に到着します。
海部は、元々牟岐線と阿佐海岸鉄道との接続駅だったところですね。
現在使用されていない旧ホームには、DMVに切り替えられる前まで走っていたASA-100形ASA101号が保存されています。
海部を出て少し進むと、車窓に海が見えました。
海部の次は宍喰(ししくい)です。
宍喰を出て少し進むと、右側に阿佐海岸鉄道の本社ビルが見え、元々車両工場だった構内には、ASA-100形と同じくDMVに切り替えられる前まで走っていたASA-300形ASA-301号が保存されています。
ASA-301号は、元高千穂鉄道のTR-200形TR-201号で、高千穂鉄道の廃線後、阿佐海岸鉄道に譲渡されました。高千穂鉄道についてはこちらをご覧ください。
甲浦のモードインターチェンジで、バスモードにモードチェンジします(画面の揺れに十分ご注意ください)。
バスモードから鉄道モードに切り替わった時の逆で、鉄道用の車輪が格納され、車高が低くなります。
バスモードに切り替わると、甲浦に到着します。
バスモードになると、普通のマイクロバスとほとんど変わりはありません。
海の駅東洋町を経由して、終点の道の駅宍喰温泉に到着します。道の駅宍喰温泉に止まるDMV。
このように名所や観光地に直接乗り入れできるのが、DMVの強みですね。
道の駅宍喰温泉は、直売所や土産物売り場がある立派な施設です。併設するホテルで温泉に入浴することもできるようです。
中にはDMVや阿佐海岸鉄道関連の展示が多くありました。阿佐海岸鉄道の模型。
DMVの模型。
DMVの木製の子ども向け遊具。車かと思いましたが、DMVと書いてあるので、DMVをイメージしているのでしょう。
道の駅の中では、DMVのグッズも売られていました。興味がある方は、購入してみてはいかがでしょうか?
ここからは阿波海南駅で撮影したモードチェンジの際の写真を紹介します。
まずは、阿波海南文化村行きの鉄道モードからバスモードにかわるところから。線路上を颯爽と走るDMV。
DMVがモードインターチェンジに到着。
バスモードに切り替わる直前。車輪が目立ちます。
車輪が格納されて、バスモードになったDMV。
動画もご覧ください(音声はOFFのほうが良いかもしれません)。
つづいて宍喰温泉行きのバスモードから鉄道モードに切り替わるところをご覧ください。DMVはのりばに停車中。
少し離れていますが、1500形の普通列車と並んでいました。
阿波海南を発車し、モードインターチェンジに到着。
鉄道モードへのモードチェンジが始まります。モードチェンジがスタート。
車輪が出て、徐々に車高が上がってきます。
車輪が完全に出て、鉄道モードになったDMV。
車輪が出ると、少し武骨な感じがします。
最後になりましたが、DMVは、道路が混雑するところは渋滞がない鉄道の線路上を通り、観光地に直接乗り入れるという使い方もでき、非常にこれからが楽しみな乗り物だと思います。
現在は、DMVの車両と通常の鉄道車両を混ぜて運用することはできないようで、他の路線には浸透していませんが、今後、ますます発展することを祈りたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
おわり。