2024年12月3日、現在は自由席となっている「のぞみ」号の3号車を2025年3月のダイヤ改正から指定席にすることがJR東海やJR西日本から発表されました。
詳しくは、JR東海やJR西日本の公式サイトよりご確認ください。
2023年の年末年始(2023年12月28日から2024年1月4日)より、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の3大ピーク期の「のぞみ」が全席指定で運転されていたり、東海道・山陽新幹線以外でもダイヤ改正毎に全車指定席の特急列車が増えたりと、新幹線や特急の指定席の拡大は、今後どんどん進められると思われます。12月になれば、2025年3月のダイヤ改正の概要が発表されると思いますが、次はどの特急が全車指定になるのか興味深いものがあります。
では、なぜ近年、特急列車の指定席の拡大が進められているのでしょうか・・・? 今回は、その点を考察してみたいと思います。
2024年3月改正より全車指定席となった「スーパーはくと」(2024年5月、大原~西粟倉間にて撮影)。
特急列車の指定席の拡大が進められる理由として、以下の4点が挙げられると思います。
- 単純に指定席の需要が増加している
- 鉄道会社にとって増収になる
- 検札にかかる乗務員の手間の削減
- 複数席を使う者や料金払わない者の締め出し
一つずつ順に考察していきましょう。
まずは、単純に指定席の需要が増加している点について。
ネット予約などで新幹線の指定券を買おうとすると、ほとんど空いていないのにも関わらず、駅に行って列車を見てみると、指定席は満席なのに関わらず自由席には空席があることよく見かけます。指定席と自由席の価格差が気になりますが、X(旧Twitter)などで見る限りでは、気にされている方は少ないようです。
次に鉄道会社にとって増収になる点について。
指定席は、自由席よりも通常期だと530円高いですが、新幹線、それも繁忙期や最繁忙期だとその違いは顕著です。
繁忙期・最繁忙期などの区分、それ以外の規則について詳しくは、JRおでかけネットなどJR各社の公式ページでご確認ください。
自由席は、一年を通して同じ料金ですが、指定席は、閑散期、通常期、繁忙期、最繁忙期と利用日毎に料金が区分されており、繁忙期だと通常期より200円、最繁忙期だと通常期よりも400円料金が高くなります。
3大ピーク期は全席指定になる東海道新幹線の「のぞみ」を例に考えてみたいと思います。
最繁忙期に自由席から指定席に変更になる1~3号車を、全員が東京から名古屋まで乗車したと仮定します。
手元の列車編成席番表によると、1号車から3号車までの定員は、号車あたりの列数と座席数5を掛けると出るので、(13+20+17)×5=250人。すべての座席が埋まったとしましょう。JR時刻表で料金を調べると、
1~3号車を自由席とした場合の1~3号車の料金収入は、4180円×250人=104万5千円となります。
指定席にすると、530円と最繁忙期の400円を足せばいいのかと思われるかもしれませんが、「のぞみ」の自由席以外の車両に乗る場合は、いわゆる”のぞみ加算料金”がかかり、「のぞみ」乗車区間は、「のぞみ」の指定席料金と「ひかり」・「こだま」の指定席料金との差額が必要です(東京から名古屋間は210円)。
1~3号車を指定席とした場合の1~3号車の料金収入は、(4180+530+400+210)×250=133万円。133万円から104万5千円の差を比べると28万5千円となり、1~3号車を指定席にした場合は、一列車あたり28万5千円も収入を増やすことができるとの結果が出ました。
また、最混雑時間帯は、「のぞみ」は1時間当たり片道最大で12本走るので、12本走ったと仮定すると、285000×12=342万。往復だと1時間あたり342万×2=684万円もの増収になるとの計算結果がでました。
e5489やエクスプレス予約など自由席との価格差が普通料金ほどはない価格で「のぞみ」の指定席に乗れる場合もあるので、単純に1時間あたり684万円の売り上げ増とはならないとは思いますが、かなりの増収になるということは、確かだと思われます。ピーク期は全席指定になる「のぞみ」(2023年7月、新山口にて撮影)。
全席指定となる期間でも立席でならば、自由席特急券でも乗車は可能です。
つづいて、検札にかかる乗務員の手間や乗務員そのものを削減できるという点について。
現在、多くの特急列車で、指定席ではほとんど検札は行われておらず、車掌が手持ちの端末で座席の使用状況を確認するのみとなっています(予約されていない席を利用している乗客を見つけたら声をかける)。それに対し、自由席では、座席の使用状況は端末などではわからないので、特急券の確認を行い、手持ちの用紙に降車駅を記入していくという検札が一部の新幹線などを除き行われています。
現在、人手不足や人件費の削減などの理由から乗務する乗務員の数を減らしていくというのが世間の流れになっていますが、自由席を多く連結している特急で、検札のための車掌が途中駅から乗ってくるという乗務員の削減に反する状況を目撃したこともありました。
今後も乗務員の削減を各社が行っていくと思われるので、それに反し、売上げも指定席に劣る自由席が淘汰されていくのは、自然の流れなのかもしれません。短距離利用者も多いJR九州の特急列車には、自由席が多く連結されています(2023年7月、博多にて撮影)。
写真の「みどり」・「ハウステンボス」(博多~早岐間併結)は、8両中3.5両が自由席で、車掌が検札のため頻繁のため巡回していました。
最後に、複数の席を使う人や料金を払っていない人の締め出しが行えるという点について。
こちらについては、上で述べた”増収になる”という点とも関わってくるかと思います。
自由席に乗ると、混雑しているのに座席を荷物で占拠している乗客を見かけることがあります。車掌が放送で呼びかけても効果はないようで、座席に座れなかった人から不満の声があがったり、時には乗客同士のトラブルなんてこともあるようです。
また、X(旧Twitter)などで、料金を払っていない未就学児が座席を利用することへの不満の声を見たことがあります。こちらは、重い未就学児を抱えて長時間乗るのは難しいと思われるので、やむを得ない面もあると思いますが。
取り上げた2点に共通するのは、”料金を払わず座席を使用している”ということです。指定席化することで、空席は他の乗客が指定して座る可能性がある席ということになり、お金を払わず座席を占拠することはできなくなります。小児料金であっても払ってもらえば、売上げになりますが、無料で使われては売上げになりません。N700Sの座席。
当然のことでありますが、座席は、お金を払って使ってもらって、始めて特急料金の売上げになります。
ここまで考えられる理由を挙げてみました。
以上に挙げた理由から、今後は、特急列車の指定席の拡大がつづくと思われますが、自由席を連結した特急列車が無くなるというわけではないと思います。
新幹線「ひかり」・「こだま」やJR九州の特急のように、短時間での利用者が多かったり、特定料金まで制定して、短時間での利用を推奨している列車では、自由席はまだまだ残ると思われます。
全席指定席の列車が増え、料金の負担増が気になる方も多くいらっしゃると思いますが、e5489やえきねっとなど各社のネット予約を上手く活用すれば、自由席とそれほど変わりない値段もしくは自由席よりも安い値段で特急に乗れる場合もあるので、この機会に会員登録なさってもいいかもしれません。ポイントを貯めることによってグリーン車にアップグレードなんてことも可能です。
鉄道会社にお願いしたいのは、ネット予約で特急券を買えない区間を無くすということでしょうか。
いつだったか第三セクターに直通する全車指定の特急に第三セクター区間だけ乗ろうとしたら、ネット予約で第三セクター区間だけの特急券は購入不可で、結局普通列車で移動したことがありました。全車指定にする以上、第三セクター区間だけの特急券も発売していただければと思います。
最後までよんでいただきありがとうございました。
おわり。